太極拳の起源には様々な説がありますが、「太極拳」という名称が定着したのは、1852年に中国河南省で発見され、後に『太極拳経』と呼ばれる文献が発見されてからといわれています。
武禹襄(武式太極拳の始祖)の兄武澄清によって発見されたこの文献は、武禹襄と楊式太極拳の始祖といわれる楊露禅との親交から、楊式の門派に伝わりました。
陳家に伝わる拳法を伝授された楊露禅は、その拳法を元に、楊露禅の子楊班侯と楊健侯、楊健侯の子楊少侯、楊澄甫へと受け継がれる間に整理・改変され、現在もっとも普及している楊式太極拳の基ができたとされています。
陳家に伝わる拳法が太極拳だったのか、それとも後に改良されて太極拳と呼べるものになったのか、五大流派それぞれに主張があり、それに研究者の主張も加わって様々な説があるのが現状です。
古来より中国では、自分の健康は自分で管理するのが当たり前で、そのために導引術や吐納術といった現代の気功や太極拳の元になる健康法が存在しました。それらをバックボーンに、大昔からの伝統を伝える養生術たる風貌を備えているのが、太極拳です。
太極拳には主な伝統流派として、楊式、陳式、呉式、武式、孫式の五大流派があり、それぞれが異なった風格を有しています。
1956年、中国国家体育運動委員会が制定した普及用太極拳である簡化24式太極拳は、楊式太極拳をベースに24の型にまとめたものです。
従来の、多くの型を時間をかけて行う伝統太極拳の套路を基礎に、誰もが覚えやすくするために整理し、簡潔に組み直したもので、それまでの「伝統拳」に対して、国家が制定したとして「制定拳」と呼ばれています。
それ以降、太極拳の普及とレベルの向上を推進させるため、また競技の規制と要求のために様々な種類の太極拳が制定されるようになりました。
太極拳はその他の武術のように筋骨を鍛錬するのではなく、呼吸法に則って内面の「気」を養い、健康を保持することを主な目的としています。したがって、体力に自信のない人でも誰にでもできる運動といえます。
古くから中国では、武術=健身法と考えられており、両者は切り離して考えるものではありません。